和楽器ことはじめ


三郎治さん(その1)

 ちょうど、去年の今頃だった。ふとウチの店に、ひとりの男がやってきた。白い綿パンにアイボリーのポロシャツを着た細身でチューリップハットをかぶったやや小柄の男だった。年の頃は60代前半、滑舌よくしゃべる好人物だった。帽子を取ってあいさつされると、禿頭が出てきて、寺の住職らしき風貌に思えた。

 「ケジメの三味線ない?」
 店に出た私に対しての第一声がこれだった。『ケジメ?』私は、あらゆる知識を総動員して答えを出そうとした。その男は、ガラスケースの三味線を指さして、さらにこう言った。
 「黒檀しかない?」

 私はようやくピンときた。「ケジメ」とは「牙締め」つまり、象牙の糸巻の三味線という意味だった。
 台座が竹製で、上に薄く象牙を入れてある駒のことを、「入牙の竹駒」などと言ったりする。この場合は「にゅうが」だが、象牙のことを略して「牙」と呼ぶ。すなわちケジメとは、ゾウゲの「ゲ」を濁らず粋に言う言い方なのだろう。

 こういう例は、江戸の粋な言葉によく出てくる。縁起を担いだ清い言い方であり、たとえば、「駒形」(地名)を「こまかた」と言ったり、「ふぐ」のことを福にかけて「ふく」と言ったりするのも、この例だろう。また、少し違う例えだが、「日本橋」を大阪では「にっぽんばし」と言うが、東京は「にほんばし」と平坦な読みで濁らない。

 またケジメの「ジメ」というのは、「締め」であり、糸巻きのことを音締め(ねじめ)と言うからである。これは長唄の「岸の柳」に出てくる。「~\締めて音締めの三味線(さみせん)も 誰に靡く(なびく)ぞ柳橋(やなぎばし)・・・」

 ともかく、「ケジメ」がなんだかわかったところでホッとしたのも束の間だった・・・・・・(つづく)
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by wagakkiya | 2005-05-28 02:28 | 心の琴線(4)

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