和楽器ことはじめ


2005年 06月 05日 ( 2 )



三郎治さん(その2)

 その男は、帽子を取った禿頭で、こう言った。
「私、知らない?」     「いえ、存じません」

「テレビにも出てるんやけど」     「さあ」

「三味線弾きに見えませんか?」     「・・・・・・」

 関西弁でもわりと上品な部類、いわゆる「京ことば」で、一気にまくし立ててきた。さも、自分が有名人だと言うように。しかし、私も知らないものは知らないので、ただ「すみません」とだけ軽く答えておいたが、饒舌に話されるので、つい聞き手に回ってしまう。

「三郎治ゆうんやけど」

 楽器屋なら知ってて当然というふうに自分の名を名乗られたが、私がきょとんとしているので、まいったなという顔つきで、ここに来た理由を述べられた。要約すると、以下のようなことである。

 自分は茶会席の出張専門の料理人で、松江の○○美術館のお宅に出張してきたところだ。このへんの名工と言われる窯を見て回ったが、自分の目にかなうものがない。帰りに米子に寄って、美術館で素人が陶芸の作品展をやっていたので、ふらっと入ったら思いのほかいいものがあった。で、これから行ってみようと思って、歩いていたらふと楽器屋が目に留まり寄ってみた。楽器屋のような老舗なら、このへんの陶芸家にも詳しいかと思って、知っていれば伺いたい。また地方の楽器屋では、掘り出し物に出会うことがあるので、もしかしたらと思って。


 ちょうど、私が長唄を習い始めた時期だったので、もっとお話を伺おうと思い、立ち話もなんなので、どうぞお茶でもと椅子を引いた。お口に合うかはわかりませんが、うちの抹茶を一服いかがですか、と。あとで、この対応をいたく誉められたが、とにかく蘊蓄をたくさんお持ちの方のようで、なにがしか訊きたかったのだ。

 「私も長唄を始めまして・・・」と言ったら、
怪訝そうな顔つきで、「なんで長唄なんか! 三味線やろ」と言われる。
「あ、ですから長唄の三味線です」と答えると、「ほんならええわ」と急ににこやかになった。

「あの、唄と三味線って難しいですよね。合ってるようで合ってないというか・・・」
私のこの疑問に対して、三郎治さんは、吾妻八景(あづまはっけい)の「砧の合方」を引き合いに、こう答えられたのである。

「唄に合わすのではなく、唄とつかず離れず弾くのが肝心」

「目につく秋の七草に拍子通わす紙ぎぬた~」(二上り)
このあとが砧の合方である。この「紙ぎぬた~」の「た」(ア)の音を引きずりながら、合方の出だしの「テトン、テトン」(#4 #1を2回弾く;楽譜ではテツン)に入るのだが、最初の「テトン」はややゆっくりで唄に対してやや控えめに、次の「テトン」は、三味線が合方へ引き込むようにはっきりと弾く。このバランスが大事だという。

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この弾き方に近いのが、下記のCD。三味線は芳村伊十七である。

長唄
今藤長之 杵屋禄三 杵屋勝国 芳村伊十七 米川敏子 中川善雄 今藤尚之 竪田喜三久 望月長樹 望月太喜雄 / コロムビアミュージックエンタテインメント
スコア選択: ★★★★

 新しい録音でややエコーが効きすぎだが、今藤長之の艶っぽい声に合わせ三味線も華やか。松の緑、秋の色種、岸の柳、吾妻八景の4曲を収録。三味線は4曲とも芳村伊十七、杵屋勝国のコンビ。

 特に「岸の柳」は独特で、ゆったり聴かせていて、後半、三下りのあとの本調子から鼓がテンポを作り、笛も加わり力の入っためくるめく展開を見せる。

 「色種」の琴の手事の合方では、米川敏子の琴が入り、まさに「みだれ」の雰囲気。

 「八景」の砧の合方は「テツン」の入り方からお見事!でおすすめ。
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by wagakkiya | 2005-06-05 06:29 | 心の琴線(4)


三味線~皮張替

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 皮を張り替える場合、前の皮をはがす前に、胴の中央に紐をかけ、もじり(象牙などの棒)を紐にかけ回してきつく紐を締めます。
 これをする理由ですが、特に古い胴などは胴を接着している膠(にかわ)がゆるんでいて、皮をはがした際にばらばらにならないようにするためです。

 上の写真で胴の角にゴムが当ててあるのは、紐が滑らないようにするためです。紐はクレモナロープか綿金剛打ちの強力ロープもしくは麻紐で、いずれも強いロープを4,5重巻きます。

 「もじり」(鏃(やじり)ではありません。)は、胴の角穴(かくあな;棹を通す穴。)で回して締め付けます。ちなみに、反対側の先は丸穴(まるあな;中子先(なかごさき)が入ります。)といい、音緒(ねお;根緒とも書き、糸を結びつけるところ)を通します。
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by wagakkiya | 2005-06-05 00:00 | 職人仕事(13)

    

和楽器屋の職人仕事と邦楽・伝統芸能の魅力をわかりやすく熱く語ります!
by wagakkiya
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