和楽器ことはじめ


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三郎治さん(その3)

三郎治さんは、稽古についてこう語っている。

「『吾妻八景』なら一日7,8回は稽古する。通して納得のいくまで弾く」

   あんなに長い曲を集中して弾くのはたいへんなことです。


「同じ曲を1,000回稽古したとする。1,001回目で、まさに三味線の音しか聞こえなくなり、三味線と体がひとつになったときにはじめて、三味線に命が吹き込まれ、いい三味線となる」

   唄とともに弾く場合の喩えです。無心になるということでしょう。宇宙を感じるということでしょう。仏教ですね。


「素人には素人の弾き方がある。プロの真似をするな」


   正確に弾くことがまず肝心で、プロの技巧をにわか仕立てで自分のものにしようと思うなということですね。


「棹を引き擦るな」

   これは、なかなか難しいんです。手が速くなればなるほど左手が追いつかなくなり、どうしても引き擦ってしまいます。棹から手を放している余裕がないんです。しかし無闇に引き擦ってては、曇った汚い音になってしまうからだそうです。ただし、これは先生のクセによって、引き擦っていいところもあります。研精会譜でいうと、「2・→3・」や「3・→#4・」などです。
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by wagakkiya | 2005-06-07 23:57 | 心の琴線(4)


三味線~棹の膠付け

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               (下棹(左)と中子)

 三味線の棹は分解できるよう、上棹(かみざお)・中棹(なかざお)・下棹(したざお)と三つに分かれていてホゾで継いであります。

 また糸巻きが入っている天神と上棹、胴に差し込む中子(なかご)と下棹は、膠(にかわ)によって接着してあります。膠とは獣や魚(サメなど)の骨や皮などから採れる粘質物で、天然の接着剤です。棹だけでなく胴の四周の部材も膠で着けます。ただ最近は木工用ボンドも質が向上しているので、全部が膠というわけではありません。

 どうしても長年使っていると、接点は合わなくなってきます。特に、この胴と棹の取り合いは微妙なもので、まさに紙一重で狂いが生じます。中子が外れるのも、胴の振動が考えられます。そうなった場合、自分で補修せず、和楽器店に持ち込んでください。料金は2,000円以下です(おそらく)。

 膠は湯に溶いたあと、直接温めず、湯煎(ゆせん)をして温度を上げます。飴色になり、とろみが出てきたらOKです。これを手早く接着面に塗り、圧着させます。完全に固まるまで4,5時間はかかりますが、乾いて強度が出てからは、はがそうとしてもビクともしません。これが膠の利点です。
 接着は、まさに時間との戦いで、接着面を合わせてから、しばらく握って動かさないことが肝要です。はみ出た膠はあとから拭き取ります。
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by wagakkiya | 2005-06-06 20:33 | 職人仕事(13)


三郎治さん(その2)

 その男は、帽子を取った禿頭で、こう言った。
「私、知らない?」     「いえ、存じません」

「テレビにも出てるんやけど」     「さあ」

「三味線弾きに見えませんか?」     「・・・・・・」

 関西弁でもわりと上品な部類、いわゆる「京ことば」で、一気にまくし立ててきた。さも、自分が有名人だと言うように。しかし、私も知らないものは知らないので、ただ「すみません」とだけ軽く答えておいたが、饒舌に話されるので、つい聞き手に回ってしまう。

「三郎治ゆうんやけど」

 楽器屋なら知ってて当然というふうに自分の名を名乗られたが、私がきょとんとしているので、まいったなという顔つきで、ここに来た理由を述べられた。要約すると、以下のようなことである。

 自分は茶会席の出張専門の料理人で、松江の○○美術館のお宅に出張してきたところだ。このへんの名工と言われる窯を見て回ったが、自分の目にかなうものがない。帰りに米子に寄って、美術館で素人が陶芸の作品展をやっていたので、ふらっと入ったら思いのほかいいものがあった。で、これから行ってみようと思って、歩いていたらふと楽器屋が目に留まり寄ってみた。楽器屋のような老舗なら、このへんの陶芸家にも詳しいかと思って、知っていれば伺いたい。また地方の楽器屋では、掘り出し物に出会うことがあるので、もしかしたらと思って。


 ちょうど、私が長唄を習い始めた時期だったので、もっとお話を伺おうと思い、立ち話もなんなので、どうぞお茶でもと椅子を引いた。お口に合うかはわかりませんが、うちの抹茶を一服いかがですか、と。あとで、この対応をいたく誉められたが、とにかく蘊蓄をたくさんお持ちの方のようで、なにがしか訊きたかったのだ。

 「私も長唄を始めまして・・・」と言ったら、
怪訝そうな顔つきで、「なんで長唄なんか! 三味線やろ」と言われる。
「あ、ですから長唄の三味線です」と答えると、「ほんならええわ」と急ににこやかになった。

「あの、唄と三味線って難しいですよね。合ってるようで合ってないというか・・・」
私のこの疑問に対して、三郎治さんは、吾妻八景(あづまはっけい)の「砧の合方」を引き合いに、こう答えられたのである。

「唄に合わすのではなく、唄とつかず離れず弾くのが肝心」

「目につく秋の七草に拍子通わす紙ぎぬた~」(二上り)
このあとが砧の合方である。この「紙ぎぬた~」の「た」(ア)の音を引きずりながら、合方の出だしの「テトン、テトン」(#4 #1を2回弾く;楽譜ではテツン)に入るのだが、最初の「テトン」はややゆっくりで唄に対してやや控えめに、次の「テトン」は、三味線が合方へ引き込むようにはっきりと弾く。このバランスが大事だという。

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この弾き方に近いのが、下記のCD。三味線は芳村伊十七である。

長唄
今藤長之 杵屋禄三 杵屋勝国 芳村伊十七 米川敏子 中川善雄 今藤尚之 竪田喜三久 望月長樹 望月太喜雄 / コロムビアミュージックエンタテインメント
スコア選択: ★★★★

 新しい録音でややエコーが効きすぎだが、今藤長之の艶っぽい声に合わせ三味線も華やか。松の緑、秋の色種、岸の柳、吾妻八景の4曲を収録。三味線は4曲とも芳村伊十七、杵屋勝国のコンビ。

 特に「岸の柳」は独特で、ゆったり聴かせていて、後半、三下りのあとの本調子から鼓がテンポを作り、笛も加わり力の入っためくるめく展開を見せる。

 「色種」の琴の手事の合方では、米川敏子の琴が入り、まさに「みだれ」の雰囲気。

 「八景」の砧の合方は「テツン」の入り方からお見事!でおすすめ。
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by wagakkiya | 2005-06-05 06:29 | 心の琴線(4)


三味線~皮張替

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 皮を張り替える場合、前の皮をはがす前に、胴の中央に紐をかけ、もじり(象牙などの棒)を紐にかけ回してきつく紐を締めます。
 これをする理由ですが、特に古い胴などは胴を接着している膠(にかわ)がゆるんでいて、皮をはがした際にばらばらにならないようにするためです。

 上の写真で胴の角にゴムが当ててあるのは、紐が滑らないようにするためです。紐はクレモナロープか綿金剛打ちの強力ロープもしくは麻紐で、いずれも強いロープを4,5重巻きます。

 「もじり」(鏃(やじり)ではありません。)は、胴の角穴(かくあな;棹を通す穴。)で回して締め付けます。ちなみに、反対側の先は丸穴(まるあな;中子先(なかごさき)が入ります。)といい、音緒(ねお;根緒とも書き、糸を結びつけるところ)を通します。
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by wagakkiya | 2005-06-05 00:00 | 職人仕事(13)


クーベリック・トリオ 2005/06/01 米子市文化ホール

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 「クーベリック・トリオ」は、“音楽の都”チェコ・プラハのプラハ芸術アカデミーで学び、ソリストとしてのキャリアも長いピアノ・トリオ。CDも数多く出していて、個々の音色も一流。石川静は、プラハでは、その演奏で英雄的存在だそうだ。

 トリオの名前の由来であるが、チェコの生んだ偉大な指揮者ラファエル・クーベリックの名を冠している。ヤン・クーベッリクを父に持ち、親子で指揮者となったチェコ音楽の至宝である。クーベリックの指揮するチェコフィルは静かな美しさの極みである。

 さて、このピアノトリオ(=ピアノ三重奏)はチェコではとても盛んで、他にもスーク・トリオ、プラハ・トリオ、チェコ・トリオなど数多くのトリオがあり、室内楽アンサンブルのひとつの極みとして親しまれている。元来チェコは、ソリストとして世界的に有名な演奏家を数多く輩出しているというよりも、小編成の「室内楽王国」として君臨している国である。それだけ音の調和とブレンドを大切にしていると言っていいだろう。

 実際、ピアノが伴奏になったり、主になったり、ヴァイオリンとチェロが個性を出したり、協調し合ったりと、実に音楽性豊かなのである。

 今回のプログラムは、ドヴォルザークのピアノ三重奏曲第4番ホ短調Op.90「ドゥムキー」をはじめ、ボロディンのニ長調『未完』に、高知市在住の武中淳彦がクーベリック・トリオのために2002年に作曲・献呈した『蒼のソナチネ』という聴き応えのある曲ばかりだった。
 さらにアンコールでは、ドヴォルザークのピアノ三重奏曲第2番ト短調Op.26よりスケルツォ、そして“世界初演”となる武中のピアノトリオ版「ニホンカモシカのダンス」という好運にも与った。

 音の響き、共鳴がこの上なく美しく、とりわけ「ドゥムキー」の音感といったら、ホールの音響性能を遙かに超えた響きが感じられ、不思議な体験をした。



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石川 静(Vn:ヴァイオリン)
カレル・フィアラ(Vc:チェロ)
クヴィタ・ビリンスカ(Pf:ピアノ)

 このチラシの背景写真は、プラハの旧市庁舎塔から「モルダウ」越しにプラハ城を眺めたもので、私が1995年にプラハを旅したときに撮影したものである。右上の尖塔が王宮内にある聖ヴィート大聖堂である。
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by wagakkiya | 2005-06-03 05:49 | コンサート感想(8)

    

和楽器屋の職人仕事と邦楽・伝統芸能の魅力をわかりやすく熱く語ります!
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