きのうは、民謡の厚めの皮の張替。
最高によく張れたので、気持ちがいい。
厚い皮は特に神経を使う。引っ張り加減が重く難しいからだ。
いい三味線ほど、お客さんの要求も高いので、いわゆる「カン張り」をしないといけない。
「カン張り」とは、皮の表面を指ではじいた時に、カンカンという乾いた高音がするからなのだが、実際は厚い皮になればなるほど、コツコツという音に近くなる。
この音を見極め(聴き極め)ながら、皮をどこまで引っ張るか
調整をしていく。
ある程度、いい音が出てからが勝負所で、ここは他の一切の音を排除し、指ではじいた音と、皮の弾力の感触など耳、手、目など五感の勝負となる。
耳の鼓膜に跳ね返る音を聴きながら、慎重に微調整をしていく。
これは、まさに「勘(カン)」によるもので、自分の耳によい基準を刻み込んでおかなければならない。
しかも、皮は天然の犬皮(ケンカワ)なので、一枚一枚異なる。
傷もあるので、裂けやすい傷は補修しなくてはならず、余計神経を使う。特に厚いけケン皮には、ひっかき傷や傷の治った痕(縫い傷)が多く、さらなる慎重さが要求される。
だから、それらをすべてクリアして、いい音で張れた時は、何物にも替えがたい喜びと充実感があり、だからこそやりがいもあるのである。