今度は「三下り」(さんさがり)の話です。
三下りは、「明の鐘」(あけのかね)や「越後獅子」など江戸情緒の雰囲気のあるしっとりとした曲や場面に多い調子です。
三下りですから、本調子から三の糸を一音下げます。たとえば、四本で本調子に取っているなら、C/F/C・のC・をA#・に下げます。
(「・」は便宜上、1オクターブ高いことを表します。)
ピアノの白鍵・黒鍵の並びを見ればおわかりのようにB(シ)とC(ド)は半音なので、ハ長調だと「ド」を「ラ#」(=シの♭)に下げるということです。
本調子 二上り 三下り
一本 A A/D/A A/E/A A/D/G
二本 A#(B♭)
三本 B B/E/B B/F#/B B/E/A
四本 C C/F/C C/G/C C/F/A#
五本 C#(D♭)
六本 D D/G/D D/A/D D/G/C
七本 D#(E♭)
八本 E E/A/E E/B/E E/A/D
九本 F
十本 F#(G♭)
十一本G G/C/G G/D/G G/C/F
十二本G#(A♭)
長唄の名曲「秋色種」(あきのいろくさ)では、曲の後半で、二上りから三下りに転調します。本調子から三下りにするのは、三の糸を一音下げることで済むので、一本の糸巻きを変えるだけでいいのですが、二上りから三下りにするには、二の糸を戻して、三の糸を下げなければなりません。これは二本の糸巻きを回さなければならず、手間です。
そこで、
一の糸を一音上げることで、相対的に三下りにします。これなら、糸巻き一本を変えるだけで済みます。よく考えられたものです。
つまり四本で本調子(C/F/C)に取っているのなら、二上りでC/G/Cとなっているわけですから、三下りとするためには、一の糸を一音上げて、D/G/Cとします。これだと六本の三下りとなりますね。(上の表を見てください。)
三味線の楽譜(譜面)については、音符に別の表記がしてありますよね。これについては、またお話しします。