『秋色種』(あきのいろくさ)
<本調子>・7 3 7 (B E B)
(前弾)
秋草の東(あづま)の野辺の忍ぶ草 偲ぶ昔や いにしえぶりに
住みつく里は夏苧(なつお)ひく 麻布の山の谷の戸に
朝夕向こう 月雪の 春告げ鳥の 跡分けて
なまめく 萩が花ずりの 衣雁がね(ころもかりがね)
声を帆に上げて下ろして玉すだれ
端居(はしい)の軒の庭まがき うけら紫 葛尾花
共寝(ともね)の夜半(よわ)に荻の葉の 風は吹くとも露をだに
末路(すえじ)と契る女郎花(おみなえし)
その暁の手枕(たまくら)に 松虫の音ぞ
(虫の音の合方)
楽しき 変態 繽紛(ひんぷん)たり
神(しん)なり また神なり神声(しんせい) 婉転(えんてん)す
(大薩摩 本手押重;おおざつま ほんておしがさね)
<二上り>・7 #4 7 (B F# B)
夢は巫山(ふざん)の雲の曲 雲の曙
雨の夜にうつすや 袖の蘭奢待(らんじゃたい)
止めつうつしつ 睦言(むつごと)も いつかしじまの かねてより
言葉の真砂(まさご) 敷島の
道の行く手の友車(ともぐるま) 来ると明くとに通うらん
峰の松風 岩越す波に すががく琴のつま調べ
(琴手事の合方;ことてごとのあいかた)
<三下り>・7 3 6 (C# F# B)
うつし心に 花の春 月は秋かも 時鳥(ほととぎす) 雪に消えせぬ
楽しみは尽きせじ尽きぬ 千代八千代
常磐堅磐(ときわかきは)の松の色
いく十返り(とかえり)の花に謳わん
(演奏約20分)
※三下りの「月は秋かも」を「月の秋風」と唄う場合あり